お疲れ様です。
日本語では「とても美しい」より
「美しい」だけのがより美しい
このコピーがめちゃくちゃ印象的です。
今回の過去問はなんだかこの
コピーを思い出させます。
早速表題の件ですが
問い
アナログ水晶腕時計の時刻を合わせるときは、
少し進めた後、針を逆回しして合わせるとよい。
解答:正
簡単な説明
クォーツの時計の時刻を合わせるとき、
現在より少し先の時間に合わせてから、
時間を巻き戻すように逆回しして現在の時刻に合わせるといいんです。
これによって歯車への負荷が軽減され、寿命が保たれやすくなります。
詳しい説明
歯車と歯車の遊び
歯車を作る!ってなったら歯車のお互いの歯がピッタリかみ合って
精緻に作ってあった方がいいって思いますよね?
歯車をスムーズに動かすにはちょっとしたスキマが必要なんです。
このスキマをバックラッシュと言います。
このバックラッシュは
力を伝えている歯車と押されている歯車が接しているとき、
つまり噛み合っているときでさえ
歯同士がピッタリとハマらないようにしてあります。
そりゃピッタリとハマったら動かなくなりそうですよね。
時刻合わせの時に一度時計を進めてから逆もどしするのは
このバックラッシュをより確保するためです。
リューズ操作は時計単体ではありえないほど
歯車を高速回転させてます。
その歯車の噛み合い方で進ませると角度的に
本来起きえない状態で噛み合っている可能性も考えられます。
ゆっくり逆回しをしてあげることで
本来回るべき方向へと余裕を持たせてあげることができるので
歯車の劣化・摩耗を防ぐことができるのです。
バックラッシュがないと…
消耗(磨耗)が激しくなり、動きもいびつになります。
時計の針を動かす歯車の列、輪列は
一定の速度で動き続けるのが理想です。
この理想を実現するためには、歯車にかかる力が一定である必要があります。
仮にバックラッシュがなく、ハマった状態になると
このバックラッシュがなくなると
歯車の歯は2点以上で接することになり
歯車同士の摩擦も強くなってしまいますす。
摩擦が生じるということは、抜け出すまでに摩擦よりも強い力が必要になり
一定の速度で針を動かすことが難しくなります。
摩擦が生じた状態で力を加えると、少しずつ擦れて
磨耗につながります。
こうして歯車は劣化していきます。
バックラッシュの副産物
誤差の吸収
バックラッシュは時計の進歩に欠かせないといっても過言ではありません。
歯車のスムーズな動きを支えるほか、
- 大量生産
- 熱膨張
この2点においても貢献しているのです。
機械によって大量生産されたパーツは
どうしても誤差が生じてしまいます。
パーツの形が異なるのはなにも製造時だけではありません。
昔の時計は時計職人が手作業で削りながら
パーツが正常に機能するまで微調整を行っていました。
どれだけ、手を込んで精密にメンテナンスしても
温度だけはどうしようもありません。
鉄製のパーツは温度が10℃上がると0.001mm膨張します。
同じ0.001mmでも細かなパーツになればなるほど
膨張率は大きくなるので時計にとっては多いな脅威です。
バックラッシュで空洞な部分があるだけで
パーツの細かな形の違いや変化があっても
問題なく動作するようになります。
こういった誤差修正機能も持ち併せています。
衝撃の分散
落下させてしまったときや、
劣化や姿勢差などでパーツが傾いてしまったときにも
バックラッシュは役立ちます。
バックラッシュがない場合の画像をもう一度みるとわかるように
ガチガチにハマってしまいますと、
衝撃の逃げ場がありません。
これは2章のバックラッシュがないと…でも説明したように
歯車が一定の速度・力で回らなくなると同時に
外部からの衝撃に対しても逃げ場がなく
すべてのパーツに玉突き事故が起きます。
パーツがズレてしまうと動かなくなるのはもちろん
歯車の軸が歪んでしまったり、
軸によってムーブメントの地盤が傷ついてしまったりもします。
衝撃を逃がすためのスキマとしてもバックラッシュが必要なのです。
針ズレ
唯一欠点を申し上げるとしたら
バックラッシュは針ズレの原因であることです。
歯車にスキマがあるということは
上記の衝撃吸収などによって歯が噛み合っていても
揺らぎが起き得るということです。
クォーツの時計は1秒ごとに6度ずつ進みます。
図のようにインデックスの中心を針が位置しないことは頻繁に起こります。
スイス製の時計はこの針ズレに関する検査が厳しいと聞いたことがありますが
針ズレを減らすべく、精密に作れば作るほど
環境の変化や衝撃に対応できなくなります。
日本はとくに、カシオがG-shockのように
衝撃に強い時計を作りたがっていたせいか
セイコーのショックレジストなど
海外に比べて対衝撃のギミックが多い気がします。
精密と信頼性のせめぎ合い
精密なだけの機械は、美しい夢です。機械とは、ある目的を遂行するために作られる道具であり、道具である以上実用に耐える信頼性が必要なのです。バックラッシュは、言わば腕時計という精密機械に信頼性をもたらすためのひとつの現実的な解決策
これはシチズンのホームページの針ズレに関する答えの一部です。
冒頭で申し上げた
日本語では「とても美しい」より
「美しい」だけのがより美しい
になんだか似てますよね。
ベターを積み重ねた先に
ベストが存在するわけでありません。
目的に合わせた
部分的に不条理、全体的には合理的なようで
非常に面白い特徴ですよね。
いかがでしたでしょうか!
今日のまとめ
- ◎バックラッシュ ×ラッシュバック
- スキマがあった方が歯車はスムーズに動く
- 熱膨張や製造誤差の相殺する
- 落下の衝撃やパーツのズレを吸収する
- 針ズレを引き起こす必要悪
くらいですかね!
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